温故知新


 第55話 五十歩をもって百歩を笑う 「孟子」


 見かけはともかく,質の上で似たりよったりであることを言います.
 恵王の質問です.私は河内が凶作の年には河東に移民を移し,食料を河内に運びました.河東が凶作でも同様でした.隣国以上に国政には心を砕いてきましたが,人口が増えません.これはなぜだろう.

 孟子の答えは,大王は戦い好きだから,それを例にとりましょう.陣太鼓がなっていざ合戦と言う時に,鎧を捨て太刀を引きずって逃げ出した兵士がいる.一人は五十歩逃げて止まり,一人は百歩逃げてとまった.この場合,五十歩逃げた兵士が百歩逃げた兵士を捕まえて,この臆病者めと嘲ったとしたら,王はどうお考えか.

 恵王.それはおかしい.両方とも逃げ出したことには変わりはない.孟子.だとしたら,これしきの政策で隣国以上の人口増加を期待するのもおかしい.農繁期に人民を駆出さなければ食糧不足は解消する.乱獲乱伐を禁止すれば魚や木材不足は解消する.こうなれば民の生活は向上し,死者を手厚く葬ることも出来る.宅地を利用する桑作を奨励し,家畜の増産を指導すれば老人も絹を着,肉が食べられる.その上で孝悌の道義心を高めようとすれば,老人が重い荷物を持ち歩くような光景はなくなる.老人が絹を着,肉を食べ,民衆が飢えも凍えもしない,こういう政治を行って王者になれなかった例はないのだ. (99/5/3)


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