第49話 われ必ずこの羽葆蓋車に乗るべし 「蜀書」
天下を手中にした人物には,若い頃から並々ならぬ大志を抱いていたことを示すエピソードが,よく残されているものですが,これもその一つです.「羽葆蓋車」は,羽根飾りの付いた皇帝の乗る車のこと.これに乗ってやるぞと言うことは,むろん皇帝になってみせると言うことで,劉備が幼い頃に言った言葉とされています.
劉備が子供の頃暮らした家の南の角に,一本の桑の大木がありました.高さは五条を超え,枝がこんもりと茂っていて遠くから見ると,貴人の乗る車の蓋のように見えていました.「この家からは,きっと身分の高いお方が出るぞ」という者もありました.劉備が,この木下で遊んでいて仲間にこのせりふを言ったところ,叔父に聞きとがめられ,「人様に聞かれたら,一族皆殺しにされるぞ」と叱りつけられたそうです.
これは,始皇帝の行幸を見た項羽が,「彼に取って代わるべし」とおめいて,叔父の項梁に口をふさがれたと言う話しと同音異曲であります.が,それはともかく,劉備は幼い頃父を亡くし,それからは母を助けて,草履売りや筵織りで暮らしを立てていました.この貧しい生活の中で,劉備が,人一倍旺盛なハングリー精神を培ったことは確かでしょう.(98/9/21)
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